地下歓楽街―Information―
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あまりに調子が悪いので、50ページ以上書いた今になって人称を買える事にしました。
章ごとに蓮とキョーコの視点が切り替わる三人称 → 章ごとに蓮とキョーコの一人称
書き直しながら気付いたけど工口さが段違い。
お試し読みとして、書き直す前(一部まざっとるがな...orz)の冒頭の約5ページを続きに載せておきます。
まだあまりきわどいシーンはありません。
Web用に改行を追加していないので、読みにくいかも。
拍手レスとメールの返信がまた滞ってます。すみません。
『そしてふたりは愛を知る』
幸せな、夢を見た。
最上さんに好きだと告げて、彼女が俺の想いのすべてを受け止めてくれて、身も心も一つになる。
そんな夢を。
夢の中で俺は何度も彼女に「愛してる」と囁き、彼女は「私も」と返してくれた。
口づけあって、柔らかな乳房に吸い付き、固く閉じられた蕾をこじ開けた。何度も何度も欲望のままに貫腰を振り、押さえ込んでいた想いの分だけ……を注ぎ込んだ。
愛し、愛され、生まれて初めて味わうような快感に包まれ、彼女のことしか考えられなくなった。
幸せで、幸せで、こんな日々が続くのであれば、もう他に何もいらないとさえ思った。
けれど、それは幻だった。
「うぅん……」
カーテンの隙間からこぼれる日差しにまぶたを刺激され、蓮は目をあけた。
サイドボードに置かれた目覚ましの針は一直線に天井と床を指し示している。まだ時間があるなと考えて、蓮は寝返りを打った。
そして、硬直した。
目の前に明るい茶髪が飛び込んできたのだ。
手を伸ばし、そっとかき分けて現れたのは、穏やかに寝息を立てる最愛の少女の姿。
「最上…さん?」
なんで一緒のベッドに!? 混乱したまま布団をめくると、肩から腰までのむき出しのラインが見えた。
昨夜見た夢の光景が脳裏をよぎる。
「まさか、あれは現実?」
夢だと思っていた行為もすべて実際に起こった出来事だとしたら、それは願ってもない幸運だ。しかし、どういった経緯でそこに至ったのか、頭に靄がかかったようで思い出す事ができない。
告白したのはどちらだったのか。自宅に誘ったのはどちらだったのか。そして、行為に至るきっかけは?
昨日の打ち上げで飲んだ酒がまだ残っていて、夢と現実の境界をはっきりさせようとして、蓮はひどい頭痛に襲われた。
うんうんとうなりながら昨晩の出来事を思い出そうとしていると、体の下でキョーコが身じろいだ。「ううん」と小さくうめき、蓮に見守られる中、まつげを震わせながらゆっくりとまぶたをもちあげる。
焦点があうまで、しばし間があいた。
「つっ、つっ、っ敦賀さん!?」
「おはよう」と、蓮が声をかけるよりも早く、キョーコは暴れだした。蓮の胸を押し返し、逃れようとするかのように、じたばたともがいている。
「ちょっと、最上さん、どうしたの?」
「いやっ! 離して!」
「え……?」
顔を認識するなり態度が急変したキョーコに、蓮は面食らった。表情には照れや恥じらいではなく、嫌悪や恐怖に近い感情が浮かんでいる。
「最上さん?」
顔をのぞき込むと、キョーコはそっぽを向いた。
そして、消え入るような小さな声で、「抜いて、くれませんか……」とだけ呟いた。
その時、二人はまだ一点で繋がったままだったのだ。
* * * * *
「落ち着け……、落ち着け、俺」
蓮は逃げるようにしてシャワールームに入り、冷水に打たれて冷静になろうとした。
蓮とキョーコが関係を持った事は疑いようがない。目覚めてからキョーコに言われるまで、蓮のものはキョーコの中に挿入されたままだった。何度目かの最中に力尽きて、そのまま眠ってしまったのだろう。
ちらっと見たシーツにも嫌というほど情事の痕跡が残っていた。しばらくご無沙汰だったとは言え、一回や二回の量とは思えない分量の白い粘液と、そこに混じったわずかな赤。
……キョーコの初めてを奪い、彼女の中外に何度も放った証拠だった。
告白し、想いが通じてからの出来事ならばまだ良い。
だが、キョーコの反応は、愛し合って結ばれた翌日の態度ではなかった。これまでの経験に照らし合わせると、たいていの女性は初めて迎えたに照れや恥じらいを浮かべて蓮を見つめたものだが、それとはまったく様相が異なっている。
キョーコは目覚めるなり、まるで悪夢だとでも言わんばかりに蓮から逃れようとした。蓮が「シャワーを浴びてくるからそこにいて」と言い残して去ろうとすると、安堵したようにホッと息をついていた。
「まさか、無理矢理抱いたのか?」
そう考えると筋が通る。だが、そうであってほしくない。
蓮は必死に記憶の糸をたどった。
昨夜、蓮は珍しく映画の打ち上げに出席した。
普段の蓮ならば多忙を理由に不参加を決め込むのだが、今回の映画の撮影期間は五ヶ月の長期に渡り、主演者とスタッフの間に一体感が生まれていたため参加を見合わせると言い出しにくい雰囲気があった。加えて友情出演を果たしたキョーコが途中参加するとあっては、断る理由が見つからない。
蓮は開始時刻に十分ほど遅れて会場入りした。
映画は前評判が上々で、すでに著名な映画祭への招待も決まっている。そのせいか監督や助監督、主要なスタッフは打ち上げが始まる頃にはすでにできあがっていて、定刻に集まった出演者たちはタチの悪い酔っぱらいに絡まれ、しこたま飲まされた。
もちろん蓮もだ。
キョーコがいつ会場に現れたのか、蓮にはわからなかった。ただ、気付いたら近くにいて、俳優陣や男性スタッフに酌をして回っていた。
プロデューサーや女優たちに囲まれていた蓮の元には一度挨拶に来ただけで、その後はほとんど会話らしい会話をしていない。
キョーコの隣には、常に肝っ玉母さんマネージャーが鉄壁のガードを展開していた。彼女が目を光らせていたので、酔っぱらいに酒を飲まされることもなく、タチの悪いセクハラに遭うこともなく、キョーコは打ち上げの場を楽しんでいた。
だが、蓮はそれが気にくわなかった。
キョーコの周りには鼻の下を伸ばした男達がいた。マネージャーの手前、おとなしくしていたようだが、端から見ている蓮の目にも下心は明らかだった。キョコはそんな彼らを邪険にすること無く、輪の中心にいて……。そんな状況に蓮は苛立っていた。
日付が変わった頃、一次会がお開きになった。二次会に行く者は店の送迎バスに乗り、そうでない者はそれぞれ家族や事務所に電話して迎えを呼んで帰って行った。
キョーコは共演者の誘いを断って、マネージャーの車に乗り込んだ。
蓮も二次会には不参加を決め込んでいたので、社が呼んだタクシーに一緒に乗った。
しかし、車が走り出す直前にキョーコが走り寄って窓ガラスを叩いた。
マネージャーの夫から「子供が熱を出してすぐに帰ってこい」と電話があったとか、そんなことを言っていたと思う。マネージャーの自宅とキョーコの下宿先は方向が反対で、送っていたら一時間以上帰宅が遅くなるからと、キョーコ自ら遠慮してきたのだと言っていた。
会場となった店は交通量の多い通りから離れていたため、流しのタクシーを捕まえるのは難しい。だから蓮たちの車に一緒に乗っても良いかと聞いてきたのだ。
彼女の下宿先は蓮や社の家とも違う方向だったものの、社は二つ返事でOKしてキョーコを同乗させた。
タクシーは最初にだるまやへ向かった。社は途中の道で変に気を利かせ、用事を思い出したと言って下車し、後部座席に二人取り残された。
「その後、どうしたんだっけ?」
だるまや前に行ったものの、キョーコを下ろさずにそのまま蓮のマンションに向かった? それとも、行き先を変更した?
どうしてもその先がわからなかった。
タクシー代を払ったかどうかも、タクシーを降りてから部屋に上がるまでの事も、キョーコを抱いている最中の事も、肝心な部分がどうしても思い出せない。
理由としてもっとも有り得そうなのは、酔いつぶれて意識のなくなった蓮を心配したキョーコが行き先を変更し、マンションまで連れてきたという展開だろう。
以前、風邪で倒れた社の代理マネージャーに就いたときも、意識を失った蓮を病院に連れて行ったり、マンションに連れ帰って看病したりしてくれた。朦朧とした状態の蓮を放っておけなかった、と、彼女なら言うだろう。
そして、蓮は意識がはっきりしないまま、寝室に運んでくれたキョーコをベッドに引きずり込み、嫌がる彼女を無視してコトに及んだ。
「最悪だ」
その時の様子が見てきたかのように思い浮かんだ。
打ち上げの間中、蓮は理性で嫉妬を抑え込んでいた。記憶はなくても、理性を失った自分ならやりかねないと思う。
うろたえるキョーコの両手を枕におしつけてブラウスを引きちぎり、裸に剥く。足首を掴んで強引に広げさせ、誰の目にも触れないまま大切に育ってきた無垢な蕾を空気に晒した。そして……。
夢で見たものとはまったく異なる光景が、芋づる式に浮かんできた。
これが失った記憶の欠片なのか、それともただの妄想なのか、はっきりとはわからない。だが、妙に鮮明なイメージが浮かぶということは、妄想ではなく……。
「最悪だ」
蓮はもう一度つぶやいて、鏡に拳を打ち付けた。
キョーコを力づくで犯しておきながら幸福な夢を見てしまった自分が情けなかった。彼女を苦しめた事も忘れ、自分の都合の良いように記憶を書き換えようとしていた事が恥ずかしかった。
酒に呑まれていたとは言え、許されないことだ。誠意をもって謝罪し、責任を取るしかない。
こんな感じの話です。
酔ってやっちゃった事から始まった物語はスキビでも結構見てきましたが、たぶんその先の展開は誰も想像できない斜め上だと思います。
暴走しすぎ。えへ。